古来より神聖なる山であった二上山東麓に位置する當麻寺(奈良県葛城市)は、荘厳(そうごん)な極楽浄土の様を表した本尊綴織當麻曼荼羅(つづれおりたいままんだら)(国宝)と、奈良時代に當麻曼荼羅を織り表させ極楽往生を果たしたとされる中将姫(ちゅうじょうひめ)に関する伝説で知られ、毎年5月には、中将姫が極楽へ往生する様を再現する壮麗な儀式「練供養(ねりくよう)」(聖衆来迎練供養会式(しょうじゅらいごうねりくようえしき))が続けられています。
當麻寺の草創については不明な点が多いながら、縁起は7世紀にさかのぼります。一説に聖徳太子の弟、麻呂子親王(まろこしんのう)が推古天皇20年(612)に河内に建立した万法蔵院(まんほうぞういん)を前身寺院としたといい、天武天皇10年(681)現在地へ移ったと伝えます。當麻寺には日本最古とされる梵鐘や、創建期本尊とみられる金堂の弥勒仏像(みろくぶつぞう)や四天王像など、白鳳期にさかのぼる寺宝が現在まで守り伝えられ、実に1300年を越える長い歴史を実感させます。
平安時代の當麻寺では密教化が進んだようですが、平安時代末期には當麻曼荼羅の存在が急速に脚光を浴びはじめます。以降、當麻曼荼羅を中心とした極楽浄土信仰の拠点として天皇や貴族からも深い帰依(きえ)を集めました。そして浄土宗の積極的な宣布を背景に、中将姫の物語と當麻曼荼羅への信仰は日本中へと広がっていきます。
また當麻寺の寺地について、縁起にはそもそも役行者(えんのぎょうじゃ)の領地であったと説かれるように、二上山麓を行き交う修験者(しゅげんじゃ)との関わりも深く、さまざまな信仰者が集う寺院であったことも見逃せません。
當麻寺は、平成24年(2012)に前身寺院とされる万法蔵院の創建から1400年、そして平成25年(2013)には、中将姫の祈りによって當麻曼荼羅が織り表されたと伝えられる天平宝字7年(763)から1250年を迎えます。本展はこの節目の年にあたり、本尊綴織當麻曼荼羅(国宝)をはじめとする寺宝を一堂に会し、関連資料を加えて、奥深い當麻寺の信仰の歴史とその魅力に迫る、初の「當麻寺」展です。
■ 當麻寺による法要
◇4月5日(金)[内覧会]當麻寺一山による法要
◇会期中に各塔頭(中之坊、奥院、西南院、護念院)による法要を予定しております。
5月19日(日)11時「導き観音祈願会 声明と尺八による音楽法要」當麻寺中之坊
■ 當麻寺による出張イベント@奈良博
◇ 4月7日(日) 「中将姫と當麻曼荼羅 絵解き拝礼式とともに」(講話と実演)
當麻寺中之坊院主 松村 實昭師
◇ 4月14日(日) 「當麻寺聖衆来迎練供養会式と菩薩講」(講話と実演)
當麻寺護念院住職 葛本 雅崇師、菩薩講中
◇ 4月29日(月・祝)「極楽浄土へのあこがれ」(講話)
當麻寺奥院住職 川中 光教師
◇ 5月3日(金・祝) 「當麻寺の雑学」(講話)
當麻寺西南院住職 山下 真弘師
※いずれの回も午後2時~3時。
詳細、お申し込み方法については、奈良国立博物館ホームページでご確認ください。
■ 4月27日(土)学術シンポジウム「綴織當麻曼荼羅」 奈良国立博物館講堂にて。
※詳細・お申込み方法につきましては、奈良国立博物館ホームページでご確認ください。
■ 當麻寺での現地特別公開
日本最古の梵鐘(ぼんしょう)として名高い當麻寺の国宝梵鐘が、展覧会会期中當麻寺境内で特別公開されます。この期間のみ足場を組み、間近に梵鐘を見て頂けます。本展と併せて當麻寺にもお出かけください。
※伽藍三堂の拝観券もしくは本展覧会の半券が必要です。
■ 當麻寺の拝観特別割引
展覧会会期中、本展と當麻寺(※)を巡るスタンプラリーを実施します。本展観覧スタンプで當麻寺の拝観料が割引になり、當麻寺拝観スタンプで本展の観覧料が200円引となります(前売券や団体料金は対象外)。3つ以上のスタンプを集めた方には、記念品をプレゼントいたします。詳細は、奈良国立博物館ホームページに掲載いたします。
(※)伽藍三堂と4塔頭(中之坊、奥院、西南院、護念院)の計5か所。