立春をすぎると急に陽ざしがやわらかくなり、山野にはふきのとう、つくしが頭をもたげる。わらび、ゼンマイは新芽を出し、たけの子もこの季節ならではのものだ。春は、暖かな山野で摘んだ山菜や野草を中心に、それぞれの持ち味を生かした料理ができ、大いに精進料理の醍醐味が味わえる季節である。 竹の子を主体にした料理としては、生のまま酢味噌をつけて賞味するお生料理、竹の子の昆布煮、竹の子おでん、各種竹の子あえ、竹の子ご飯などがあげられる。せりやつくしのごまあえ、わらびの白あえ菜の花 の辛子あえなど各種あえものもおいしい。また桜ご飯、つくしご飯、新茶ご飯など季節ならではの変わり飯を楽しむことをできる。
日本の夏はとくに湿度が高く暑苦しく感じられ、なかなか食が進まない。食卓には涼しげな食欲をかきたてる料理を用意し、体力の衰えを防ぎたいものだ。幸いこの季節は、なす、キュウリ、トマトなど夏野菜が豊富である。梅やしその葉、みょうがなどの味を薬味にピリッときかせ、食欲増進をはかるのもよい。 豊富なナスを使ってなす田楽、茶筅なす、なすの丸煮などもよい。キュウリのごま酢辛子あえ、春雨とキュウリ酢味噌あえや酢のもの、トマト、さやいんげん、人参、キュウリの酢味噌サラダ、冷ややっこ、そうめんも代表的なこの季節の料理である。
春の山野の山菜の豊かな恵みと並行して、この季節も自然の恵みの豊富な時である。深まりゆく秋の中で、松茸やしめじなどのきのこ類、柿、栗、ぎんなんなどの果実を料理に加え、秋の味と風情を楽しみたい。 ゴボウ、人参、しめじ、ぎんなん、麩などを使った煮物の吹き寄せ、しめじ、えのきなどの酒蒸しや酒炒り、ぎんなん、黒豆、むかご、栗などを炊きこんだ変わり飯。大和芋を使って煮物、あえ物、揚げ物なども工夫できる。
戸外に凍てつくような北風が吹き、降雪をみる厳しい冬。そんな季節だからこそしみじみ味わえる精進料理もある。冬は温かい鍋物、湯気の立つ大根の煮物、熱い茶碗蒸し、湯豆腐。これらはすべて一般家庭の食卓にも定着している。また正月を迎えるにあたり、寺院ごとに工夫をこらした正月用の特別の膳も現在では発達している。きんかんを「金」、ぎんなんを「銀」、ふきを「富貴」に因ませ、金銀富貴と銘した煮物の盛り合わせ、大和芋と高野豆腐で羽子板と羽根を型どり盛りつけられる「つくばね」。精進料理は季節感を賞味する料理といえる。
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