は行の仏教用語
は
貝多羅葉(ばいたらよう)
単に貝多羅、または貝葉とも。梵語パッタラの音写。タラ(多羅樹)の葉で、古代インドで紙の代わりに用いた。この上に鉄筆で経文を彫って書物として保存した。葉質が堅く密。
破邪顕正(はじゃけんしょう)
誤った見解、よこしまな考え方、囚われを打ち破り、正しい見解、正しい考え方、道理をあらわすこと。三論宗の根本教義で、破せられた邪は考え方を変えることで正となる。
波羅蜜多(はらみた)
梵語パーラミターの音写。度と漢訳。のち、到彼岸と訳す。絶対の、完全の、完成した修行、の意。
婆羅門(ばらもん)
梵語でブラーフマナの音写。インドの四姓の最高位、僧侶、司祭者階級。単にインドから来た修行者の意。インドの民族宗教を司り、その思想、哲学を遵守し、祭式・儀軌を継承する僧侶。
ひ
比丘・比丘尼(びく・びくに)
比丘は、乞食者の意。バラモン教で遍歴修行者を呼んだが、のち、諸宗教を通じて托鉢する修行者をよぶ。250戒を受ける。比丘尼は女性の出家修行者、348戒をたもつ。
白毫(びゃくごう)
白い旋毛。仏の眉間から白い長い巻き毛が現われていると信じられていた。仏の三十二相のひとつ。眉間に白玉のような光ある相を示すと考えられていた。
毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)
梵語ヴァイロチャーナの音写。輝くもの、の意。盧舎那仏・遮那と略す。もと太陽の意。仏の智慧の広大無辺なるを象徴して言う。密教では大日如来と同体とする。
ふ
不可思議(ふかしぎ)
不思議ともいう。ことばで表現したり、心で推しはかることのできないこと。仏の悟りの境地や智慧・神通力などの形容に用いる。
福田(ふくでん)
福徳を生み出す田、幸せを育てる田地の意。福を生ずるもと、幸せのもととなるもの。人びとの幸福の種がまかれる田、人びとが功徳を植える場所。仏法僧のこと。二福田、三福田などがある。
布薩(ふさつ)
梵語ウパヴァサタの訛りウポーサタの音写。主要な行動のために準備することから、教団で月2回同地域の憎が集まって自己反省し、罪を告白懴悔する集まり。大乗布薩・小乗布薩、大布薩がある。
不請之友(ぶしょうのとも)
たのまれて出かけるのではなくて、他人の気持ちを察して助けてくれる友。たのまれなくても進んで助けてくれる友。大乗の求道者の行い。
仏(ぶつ)
梵語ブッダの音写。悟れる者、目覚めたる者、完全な人格者、絶対の真理を悟った人。歴史上のブッダ。それ以前の過去仏。応身仏。如来の十号。一切智者、一切見者。究極の覚者。
仏性(ぶっしよう)
仏の性質、仏としての本性、仏(覚者)となりうる可能性。大乗仏教では、これがすべての人間、存在に具わっているという。真の人間性、普遍的な人間性。如来蔵、覚性。
へ
別当(べっとう)
僧官の名。大寺院に置かれた寺務統轄の僧官。諸大寺に置かれた長官で、一山の寺務を統轄する。修理別当、俗別当などがある。のちには諸社にも別当が置かれた。
偏衫(へんざん)
僧祇支という掩腋衣(袈娑の下にかけ胸・腋を覆う小衣)と覆肩衣とを縫い合わせた衣のこと。初めは襟のない長い襦袢のようなものであったが、後に襟をつけるようになった。
変成男子(へんじょうなんし)
女子が変じて男子となること。女性には五つの障りがあって仏となることができないため、浄土に生まれるときに男子となって成仏することをいう。
偏袒右肩(へんだんうけん)
インドの礼法で、仏教僧が尊ぶべき人に恭敬の意を表すとき、袈裟をひとえに右肩をぬぎ左肩のみ覆うこと。
ほ
法(ほう)
梵語ダールマの漢訳。人間の行為をたもつもの、の意。慣例風習、義務、社会的秩序、社会制度、善い行為、真理、理法、全世界の根底、宗教的義務、軌則、教え、教説、本質、本性、修法の意。
法印(ほういん)
妙法の印。真理のしるし、仏の教えのしるし。三法印、四法印がある。密教での印。僧の位のひとつ。僧正に相当する僧侶の最高の位で、学徳兼備の憎が任命された。
法界(ほうかい)
「ほっかい」とも読む。十八界の一つである法境、意識の対象。きまり、定め。事物の根源、法の根源。世界、宇宙。真如、法性。全世界、全宇宙、あらゆる場所の意。
法語(ほうご)
正法を説きしめした言葉。律語の対。禅宗で、師が弟子や修行者を正しく導くために指針を示す語のこと。口で述べられることもあり、文章に書かれることもある。
方便(ほうべん)
方法。てだて。手段。工夫。真実の世界へ導く手段。衆生利益のための手段。衆生を救済し、悟りへ導くための一時のてだてとして説かれた教え、法門、すぐれた教化方法。
法門(ほうもん)
真理の教え。仏の教え。真理へ至る門、悟りに至る門。仏教への入り口。八万四千の法門というように使われ、仏教への入り口が無数にあること。
法楽(ほうらく)
釈迦が悟りを開いたのち一週間、自分の悟った内容を回想して楽しんだこと。仏の説いた教えから生じる楽しみ、法の喜び、教えを信受する喜び。本尊を供養するために経を読誦すること。
法輪(ほうりん)
輪はインド古代の武器。仏の教えが他に転じて伝わるのを輪にたとえたもの。真理の輪、真実の教え、仏および仏教の象徴。智慧の境地。法性、本当の真理、正法輪身の略。
菩薩道(ぼさつどう)
菩薩のふみ行うべき道。修行。菩薩が自利利他の行を備えて悟りに至る道。自ら仏道を求め、修行を重ねつつ、一方、他人を救済し、教化し悟らせようとする者。
菩提心(ぼだいしん)
阿耨多羅三藐三菩提心(あのくたらさんみゃくさんぼだいしん)の略。無上道心、無上道意、道心ともいう。悟りを求めて仏道を行おうとする心。悟りを得たいと願う心。修行の出発点。上求菩提、下化衆生を願う心。
法句経(ほっくきょう)
十二部経のひとつ。パーリ語の経典『ダンマパダ』の訳名。
法華七喩(ほっけしちゆ)
『法華経』に説かれる七つの譬喩。火宅喩、長者窮子喩、薬草喩、化城喩、衣珠喩、髻珠喩、医子喩。
法報応(ほっぽうおう)
化身を法身・報身、応身に分けたものを略していう。法身は法性真如を、報身は過去の修行を完成して理想的な徳を備えた仏を、応身は仏の仮のすがた、釈迦牟尼仏をいう。
本覚(ほんがく)
仏の本来の悟り。本来備わっている悟り。現象界の諸相を超越したところに存する究極の悟り、また、それを普遍すると、人間は本来生まれついたまま悟っていることを表す。
本命元辰(ほんみょうがんじん)
本命星元辰星の略。本命星とは北斗七星のうちでその人の生年にあたる星、元辰星とは、人間の運命を支配する星をいう。禅宗では、自己の本性、本来の自己の意味に用いる。
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