■葬儀の豆知識
●なぜ花をたむけるのか
花を飾るということは、装飾と同時に「慈」と「悲」をあらわすシンボルともなる。葬式、法事などの花は、家族や知人を失って嘆き悲しむ人の心をなぐさめ、結婚式の花は共に喜ぶことをあらわす。仏前や墓前に供える花は信仰上の仏や先祖に対する感謝をあらわす。花の命は短く、とくに切り花は数時間のうちに枯れてしまう。この枯れるさまをみて、人は諸行無常、盛者必衰のことわりをみることにも意味がある。
●なぜローソクをともすのか
ローソクの光は、仏の智慧を象徴している。仏とは、真理を悟り正しい道へと導いてくれる存在であり、暗闇のなかに一点ともる先にシンボライズされる。経典によると、仏前に灯明を供えることは、大きな功徳とされている。風前のともしびという言葉のように、無常の風にふかれていつ消えるかわからないともしびは、この世の無常を象徴しているともいえる。
●数珠は何のためにあるのか
ふつう数珠の珠の数は108つある。なぜ108つあるのかというと、煩悩には百八つの種類があり、その一つ一つの珠をなぞらえて経を唱えると煩悩が消えるといわれている。数珠とはサンスクリット語で「ジャパマーラー」といい、ジャパとは“低い声で唱えること”を意味し、マーラーとは輪を意味する。数珠は昔、僧侶が修行の集会日を知るために30の黒白の珠を使ったのがはじめとされているが、釈迦がモクゲンジ(菩提樹の実)百八個を置き、常にこの数珠をもって三宝の名を称えることをくり返せば、苦悩は去り身心ともに安楽になると教えたことにより、基本的には百八つの珠を満数としている。
●戒名とは
戒名とは正式な仏教徒であることを示す名前のことである。正式の仏教徒とは三帰五戒を守り、悟りをひらいた人のことである。もともと戒名とは生存中にもらうのがふつうだったが、後に引導作法が僧侶の役割となったところから、死んでから戒名をつける習慣となったのである。戒名の基本には、信士、信女、居士、大姉があり、さらに大居士や院、院殿などが加わる。
●卒塔婆とは
語源は高僧の遺骨や遺品をおさめた塚を意味する「ストゥーパ」にある。同じ音写の意味に「塔」もあり、五重の塔もそれにあたる。高僧の墓に建てられる五重の塔の簡略化した形が卒塔婆であり、上部の両側にあるギザギザは五重の塔のおもかげを残したものである。後に高僧のみならず一般平民の墓にも卒塔婆がたつようになったのは、死んで仏になるという思想に発するものである。
●引導とは
真宗を除く多くの宗派で葬儀の時に引導をわたすというが、引導とは人を導いて仏道に入れることをいう。引導の作法は宗派によって法語や作法に違いはあるが、葬儀の際、棺の前で導師が死者に向って法語を与え、成仏の教えをさとすものである。引導は死者の成仏への切り札のよ
うにとらえられるむきもあるが、本来は参列の人々への教戒の意も含まれる。真宗では、すでに阿弥陀仏によって救われているとするから引導を渡す必要がなく、十四行偈や正信偈を与えて救済された喜びをたたえる。
●喪服はなぜ黒なのか
黒色を喪の色とするのは、人々のなげき悲しみにふさわしい沈んだ色であることに由来する。本来は白と黒とが用いられ、伝統的には白である。白は死の汚れを消す清浄の色とされている。江戸時代までは白の喪服を着けるのが正式とされていたが、明治以降、特に戦時中にあっては白はぜいたくとなり、また死者の経惟子が白であることにもより、白色の喪服がすたれて黒色ずくめとなっている。
●葬儀のあとになぜ塩をまくか
不浄な世界から浄域に入るとき水垢離を行って身を清める。鎌倉時代の将軍家では、正月の精進始めには由比ヶ浜で潮水での潔斎を行った。現在でも地方によっては、気にかかることがあると潮水で身を清める風習が残っている。この潮水のきよめが塩に転化し仏教にとり入れられた。
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